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私が風俗嬢になった理由(ワケ)~その5~




 前回は、
『私が風俗嬢になった理由(ワケ)~その4~』でした。


 夫の事業の失敗、借金、離婚、
子宮ガンによる子宮摘出。

 そして、夫の裏切り、AV出演の身元バレ・・・。

 ようやく、風俗嬢として、そこに自らの居場所を得たA子。

 一人の風俗嬢への、ロングインタビュー。
今回は、『私が風俗嬢になった理由(ワケ)~その5~』、最終回です。









【夫への・・・感謝?!】




AVに出て、自らの過去を話したことで、
 夫が一人で抱えていた悩みに、初めて気づいた・・・



 何不自由なく幼少期を過ごし、
両親からの愛情を受け、
人並み以上に周囲から愛されて育った、A子。

 学生時代からの習い事では、お茶やお花、
そして書道は、先生の免許を持っているという。

 だが、それらの教室を開くには、100人の教え子が必要であり、
今のA子には、容易ではない。


『教室を開くにも、お金です。
 言い方は悪いけど、上にお金を上納する、ネズミ講のようなものです。
 世の中、何をするにも、お金が必要なんですね(苦笑)』


 言葉を選ぶように、
落ち着いた話し方で、A子が語る。

『大学を出てから、世間の荒波を知らず、この年齢まで生きて来られたのは、
夫のおかげだと思っています。
 だから、最初はお金を持ち逃げされて恨んだけど、
今では何故か、感謝しています』


 感謝!という言葉に、何か違和感がある。
 2人の子供がいるにも関わらず、彼女のお金を持ち逃げした男だ。
 疑い深い小生は、彼女の言葉を待った。


『実は、こんな風に思えるのも、AVの撮影のおかげなんです。
 それまでは、家事と育児に追われて、自分の事を振り返る余裕なんて無かった。
 ところが、初めての作品が、ドキュメント風のAVで、
私の今までの人生を振り返る、インタビュー形式だったんです。

 もう何十年も前の、ファーストキスや初体験、
今思い出しても、恥ずかしいんですけど(笑)』


 自らの人生を振り返るように、
穏やかな表情で、A子が続ける。


『学生時代のアルバイト先で知り合った夫と、
大学を出てすぐに結婚し、
数年後、子供に恵まれて、それこそ、幸せでした。

 私の場合、おかげさまで、義理の両親とも上手く行っていたんで、
嫌なことは、何ひとつありませんでした。
 夫も、仕事が忙しいながらも、家事や育児を手伝ってくれましたし・・・。

 そんな事を、AVのインタビューで話していたら、
自分が、今まで幸せだった事を、実感したんです。

 確かに、離婚前は追われるように私の実家に逃げたり、大変でした。
 私たちの生活も、破たんしましたけど・・・。
 でも、不思議なことに、
それが原因で、夫が私や子供を責めたり、DVみたいな事も、一度もありませんでした。

 きっと夫は、仕事の事も、私たち家族の事も、
一生懸命に、考えてくれていたんだと思います。

 私は、そんな夫の相談相手にも、なってあげられませんでした。

 最初は私の実家に逃げても、何日かしたら、
すぐに戻れると考えていたくらいです。
 おかしいでしょ?

 でも、それまで専業主婦で、まともに働いたことも無かった私は、
 本当に、そんな考えだったんです。

 ドキュメント作品だったので、
AVの中では、
今までの私の人生を振り返って、お話したんです。
 それで、東京に戻ってきて、最後のシ~ンだったんですけど。

 監督さんは、
 もう、コレが本当のお別れです。
 撮影を終えて、じゃあ、お疲れ様~とか言わないんで、
この撮影でお別れの握手をしたら、
そのまま、帰って下さい。

 って、言われたんです。

 そして、監督さんと握手をしたら、
それまでの私の人生が、走馬灯のように流れてきて・・・。

 私、今、何でココにいるんだろう?って。
 子供を親に預けて、夕方の駅の改札で、いったい何をしてるんだろう?って・・・。
 そう思ったら、もう泣けてきて。

 バカですよね? でも、一人で泣いているんです。
 もちろん、悲しい思い出ばかりじゃ、ないんです。
 幸せだった時もあるし、家族の楽しい思い出も、いっぱいありました。

 でも、現実に、夕方の駅の雑踏の中で、
そのとき私、ひとりぼっちになったんです。
 何か、家族や世間から、ポツン!と取り残されたような感じがして。
 うまく言えないんですけど、とても寂しくなって。
 変ですよね。ゴメンなさい』


 気になっていた質問を、A子に投げかけてみた。

『今でも、好き?』

『え?』

『旦那さんの事を、今でも好きですか?』

 しばらくの間、沈黙があった。


『うん・・・。
 お金を持ち逃げしたから、きっと彼も、後悔していると思う。
 その後、ぜんぜん連絡が無いから・・・。
 せめて、生死だけでも・・・知りたい』



『じゃあ、もし、戻ってきたら?』

 自分でも、意地の悪い質問だと思った。
 他人の生活に、土足で踏み込むようなマネである。
 関係ないだろ!余計なお世話だ!そんなこと聞くな!
と、別の自分が戒める。
 
 そして、何とも言えない自己嫌悪が、小生の背中に張り付く・・・。

 それでも、どうしても、聞いてみたかった。

 しばらくの沈黙の後、
A子が、小さくため息をついて、諦めたような笑みを浮かべる。

 そして、答えてくれた。

『難しい・・・質問ですよね。
 昔のように恋愛したり、子供と一緒に暮らすのは無理だけど、
それでも、つながりは持っていたいな。

 私は、今こうして食べていけるだけでも、幸せだと思うんです。
 それに、子供たちに、少しでもいいから、お金を残してあげたい』


『旦那さんを、許せますか?』

 大きな瞳に、いっぱいの涙を溜めて、A子は言った。

『うん・・・。
 だって、子供たちにとって、彼は父親ですもん』





【将来の夢と、お客への本音】




夢は習い事教室か、小料理屋がいいな・・・
 *画像はイメージです



 料理も得意だというA子は、
自分の得意の分野を生かして、何かの商売を始めるのが、将来の夢だという。

『お茶やお花、書道、料理も得意だから、
稼いだお金を元に、そうした教室を開きたいですね。
 私、料理も好きなんです。だから、小さな料理屋さんもいいかな』


 過去に小生は、多くの風俗嬢に『将来の夢は?』という質問をした。

 彼女たちの答えは、
自分で商売をやりたい!とか、
国内の田舎か、または海外で、のんびり暮らしたい!というのが、多い。

 厳密には、従業員という形では無いにしろ、
彼女たちもまた、人に使われる立場!である。
 それだけ、日々の仕事ではストレスを抱えている。

『商売をやりたい!』とか、
『のんびり暮らしたい!』というのは、
日々、そういったストレスを抱えている、証拠なのかもしれない。

 だが、仕事のストレスから、
稼いだ金を、貯蓄する事が出来ない風俗嬢も多い。

 水商売(ホスト)に入れ込んだり、宝飾品、洋服など、
散財する理由は、人によって違う。

 ふいに、A子の携帯が鳴る。

『どうぞ!あと少しで、インタビューは終わりますから。彼氏かな?』

『違います!子供がいたら、彼氏どころじゃないですよ(笑)』

 A子が携帯を手にする。
 最近、スマホに買い替えたらしい。
 注文していた洋服が、入荷したとの、メールだという。

『でも、お客さんには、よく誘われるでしょ?』

 悪戯(いたずら)した子供のように、A子が肩をすくめる。

『はい。よく誘われます(苦笑)』

『メルアドくらいは、教えるんですか?』

 ちょっと、困ったような顔をした。

『う~ん。
 もう白状しちゃいますけど、
人によります。
 教える人もいれば、教えたくない人もいるし・・・。

 しつこくデートに誘ってくる人や、
メールだけでも!って、
何とかして、メルアドを聞き出そうとする人も、います(苦笑)。

 でも、こんな事を言ったらいけないけど、
やっぱり、苦手な人には教えたくないです。
 そういう人には、何回か通ってくれたら、教えます!
と言います。
 今度!って言うと、次に来てくれた時に、教えないといけないでしょ?』


 どうやら、客あしらいは、心得ているらしい。
 まるで、今年の流行語大賞のトップテンに選ばれた、
『近いウチに・・・』というフレーズのようだ。

 きっと、A子にしつこく連絡先を聞いてくる客も、いるのだろう。

『あっ、でも、サービスはちゃんとしますよ。
 お店に来てくれた人には、恋人気分で接する!と決めてますから・・・』


『苦手なお客さんは?』

『う~ん。
 私は、どんな方でも大丈夫ですけど、
あっ、でも、一度だけありました。
 入ってくるなり、早く脱げよ!って命令口調で。

 20代の若い男性だったんですが、
私を人じゃなくて、モノとして見ているみたいで、悲しかったです。
 もちろん、言われた通りにしましたけど・・・』


 どんな職種でも、客商売であれば、クセのある客はいるものだ。

『今は、子育ても忙しいし、
彼氏を作るのは、時間的にも余裕が無いから、無理です。
 でも、デートはしたいですね。
 離婚してから、AVや風俗の仕事以外では、
プライベートでのエッチは、無いです』




 以上の事から、
『私が風俗嬢になった理由(ワケ)~その5~』でした。


 一般に、AVや風俗では、
A子のように、『どこか品のある女性』や、『落ち着いた女性』が、
好まれる傾向にあるようです。

 そうした女性が乱れる姿に、ファンは興奮するのかもしれません。
 
 もちろん、エロ全開の肉食系の熟女も、AVでは同様に人気があります。

 ですが、これが風俗になると、
『プロっぽい女性』より、
A子のように、『素人っぽい女性』の方が、不思議と人気があるようでした。

 取材の後も、この日のA子の予約は、
ラスト(閉店)まで、途切れることが無かったといいます。

 某巨大掲示板を見ると、
AVファンの中には、A子がAVから風俗に転身した事を、惜しむ声もありました。

 どうやら、『手の届かない場所にいるAV女優』と、
『手の届くところにいる風俗嬢』というのは、
それを喜ぶファンもいれば、そうでないファンもいるようです。
 
 AVファンにとっても、複雑なのかもしれません。

 彼女を弁護するわけではありませんが、 
今回のA子のケースでは、AVから風俗に転身しなければならない、
周囲への身元バレ!という問題があったのも、事実です。


 配偶者と離別して子供を抱え、AVや風俗で働くシングルマザーは、
A子に限らず、同様のリスクを抱えているようでした。


『身元バレが嫌なら、そんな仕事を選ばなければいい』
と言ってしまえば、それまでですが・・・。


 あくまで、個人的な意見ですが、
人が、それなりに生きていれば、
他人には言いたくない事や、知られたくない事の一つや二つ、持っているのかもしれません。



 <すすきタルン>



*本記事は、実際のインタビューを元に構成していますが、
 個人情報保護のため、一部を脚色しています。





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